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【第8回不動産投資で稼ぐ】不動産を安く購入するための交渉術

この記事でお伝えする内容
  • 不動産を安く購入するための交渉の方法
  • 価格交渉の進め方は売主の属性で変わる
  • 仲介不動産業者の「良い客」になる
目次

価格交渉の基本は売主への敬意

価格交渉で「指値」や「値引き」を要求する際にはしっかりとした根拠が必要です。根拠もなく「安くして欲しい」と言われると、売り手は非常に腹を立てます。

売主も価格に対してしっかりとした考えがあります。「単に安くして欲しい」という要求は、相手に対して「こちらの事情や価値を無視して、自分の都合だけで話を進めている」と映りがちです。

このような理由もない値引き要求が入ると、相手にとっては敬意を欠いた行動に感じられ、感情的に反発されます。

価格交渉に臨む際には、売り手の立場や状況をよく理解して、根拠に基づいた交渉を行い、双方にメリットがある形で取引を進めることが基本です。

不動産を安く購入するための交渉術とコツ

不動産の価格は、値下げ交渉をされることを前提にされているため、実際よりも費用を上乗せしています。ここをいかに戦略的に活用するかが、最終的に良い取引条件を引き出すポイントとなります。

価格交渉の方法
  • 売主が弱気になった時に価格交渉をする
  • 契約不適合責任を放棄する
  • ローン特約をつけない
  • 売り手の動機を利用する
  • 物件の問題点を利用して交渉材料にする
  • エスカレーション戦略を使う
  • 相場と比較対象(コンプ)を活用する

これらの交渉術は、不動産投資で利益を上げている投資家なら当たり前のように使っているテクニックです。売主の心理や物件の状況を巧みに利用し、タイミングや条件を調整しながら有利に取引を進めます。

交渉の方法 1

売主が弱気になった時に価格交渉をする

売主が価格を下げる背景には、売却への焦りや、急いで現金化したいという弱気な状態になっている場合が多いです。この状況をうまく活用すれば有利な条件を引き出すことが可能です。

価格を下げたかどうかは、毎日不動産の価格情報を確認する必要があります。

弱気な売主に対する交渉方法

値下げと早期決済の提案を組み合わせる

たとえば、元々3,000万円だった物件が2,500万円に下がった時点で、「2,000万円で現金決済が可能です。すぐに購入手続きを進めたいのでご検討ください」といったオファーを提示します。

値下げした直後に値引き交渉をして安くしてもらう

この場合、低い価格と即決提案を組み合わせることで、売主にリスクの少ない取引に見せることができます。

修繕費や付帯条件を交渉に盛り込む

「物件の修繕費が予想以上にかかるため、2,000万円でお願いできないでしょうか」と、物件にかかるコストを交渉材料に使う方法です。

さらに、「修繕費用を考慮して価格を調整していただければ、すぐに手続きを進めます」と取引のメリットを強調します。

「ローン特約」を放棄する提案

「ローン特約を放棄して2,000万円で購入します」と提案することで、買主がローン審査に落ちても絶対に購入することを強調します。

売主には確実に取引が成立するという安心感が得られるため、価格面での譲歩を引き出すことが期待できます。

売主が弱気になる理由

売却が長引いている

市場に出してから売却までの期間が長引くと、売主は焦りを感じます。物件の資産価値が下がっていると感じると、価格を大幅に下げてでも早く売却を成立させたいという心理が働きます。

急いで現金化したい

特にローンの支払いや他の投資案件に資金を充てる必要がある場合、弱気になることが多いです。

物件の価値を過大評価していた

最初に高く設定していた価格が市場で受け入れられず、時間が経過するにつれて、売主自身が「この価格では売れない」と判断して価格を引き下げるケースです。この場合、さらに交渉に応じやすくなります。

弱気になった売主に交渉するメリット

価格を下げた時点で、もう一度値下げが期待できる

売主がすでに価格を下げている状況は、買い手にとって有利な交渉材料となります。たとえば、3,000万円だった物件が2,500万円に下げられた時点で、さらに2,000万円という低めのオファーを提示します。

売主は「これ以上待っても、値下げしないと売れないかもしれない」と感じ、さらなる値下げに応じる可能性があります。

物件の問題点を再度交渉材料にできる

物件に修繕やリフォームの必要がある場合、それを再度指摘することで、さらなる値引きを引き出すことが可能です。

「価格を下げていただいても、修繕費用が必要ですので、さらに検討させていただけると助かります」といった形で、複数の理由を組み合わせた交渉が有効です。

売主の焦りを利用できる

売主が弱気になる理由の一つに、「早く売らなければならない」というプレッシャーがあります。これを交渉材料として活用し、「すぐに契約します」「現金で支払います」といった提案を組み合わせることで、売主が価格譲歩に応じやすくなります。

弱気な売主に対する交渉の注意点

売主が他の買い手を探し始める

過度に低いオファーを提示すると、売主が「この買い手は真剣ではない」と感じて他の買い手を探し始める可能性があります。

プレッシャーをかけすぎると交渉が破綻する

売主がすでに弱気になっている時にプレッシャーをかけると、感情的になって交渉が難航することもあります。

個人売主の場合、強引に値下げを要求しすぎると「この買い手とは取引したくない」という感情が生まれることがあります。適度なバランスが重要です。

他の買い手に先を越される

売主が弱気で価格を下げているという状況は、他の買い手も気付いています。あまり長く交渉を引き伸ばすと、他の買い手がより良い条件でオファーを出し、取引のチャンスを逃します。

交渉の方法 2

契約不適合責任を放棄する

契約不適合責任は、物件の引き渡し後に発見された瑕疵(欠陥や問題)に対して、売主が買主に補償を行う義務です。契約不適合責任を放棄することは、買主がリスクを引き受ける代わりに、売主から価格面での譲歩(値引き)を引き出すことができる、いわゆるリスクと値引きのトレードオフという関係です。

不動産取引でよく使われる交渉です

具体的には、売主は取引後に瑕疵に対する責任を負わなくて済むため、取引の不安やリスクが大幅に減少します。その分、売主はそのリスク軽減の対価として、価格交渉に応じやすくなるのです。

例えば、契約不適合責任を放棄すると、引渡し後にシロアリ被害や雨漏りといった大規模な修繕が必要なことが発覚しても、売主はそれらの修繕費用を買主に負担する義務がありません。

契約不適合責任を放棄して買主がリスクを負う代わりに、売主から通常よりも大きな値引きを引き出せる可能性が高くなるというわけです。

このように、買主が「リスクを引き受ける」ことが売主にとってのメリットとなり、その対価として「値引き」を要求する形で交渉を有利に進めることができるのです。

契約不適合責任の放棄は、値引きとリスクのトレードオフ
  • 買主:購入後のリスクを負うが、安くしてもらえる
  • 売主:売却後のリスクが消滅するため、値引きに応じる

契約不適合責任の放棄を交渉に使う方法

売主に安心感を与える

契約不適合責任を放棄する提案は、売主にとってのメリットです。

「契約不適合責任を放棄しますので、取引後のトラブルの心配はありません。その分、価格を調整していただけますか?」と交渉することで、売主の不安を軽減し、値引きを引き出すことができます。

インスペクション(物件調査)を必ず行う

契約不適合責任を放棄する際には、物件のインスペクション(物件調査)を徹底的に行うことが重要です。事前に問題点を確認し、その上でリスクを把握した上での交渉を進めることで、予想外のトラブルを防ぎます。

ローン特約の放棄と組み合わせる

契約不適合責任の放棄に加え、その他の契約条件の緩和を提示することで、売主にとってより魅力的な取引になります。例えば、「ローン特約の放棄」や「現状渡しの同意」など、取引の負担をさらに軽減できる条件をセットで提案します。

安心材料を複数提示することで、価格交渉に応じてもらいやすくなります。

契約不適合責任を放棄する際の注意点

予想外の修繕費用が発生する

契約不適合責任を放棄すると、引渡し後に物件の瑕疵が発覚しても売主に補償を求められないため、買主が修繕費用を全て負担するリスクがあります。

古い物件や調査が不十分な物件ではこのリスクが高いため、設計・施工に詳しい建築士などの徹底したインスペクションを行うことが重要です。

資産価値が予想より低下する

物件に問題が発覚し、修繕を行っても資産価値が期待通りに回復しない場合があります。特に建物の基礎やフレーム、屋根などの構造的な問題や、周辺地域の不動産価値が下落している場合、物件の価値が大幅に下がることがあります。

他の購入希望者と競争が激しくなる

他の購入希望者が契約不適合責任を求めている場合、契約不適合責任を放棄することが必ずしも有利に働かないことがあります。

確かに売主にとって、契約不適合責任を放棄する購入希望者は魅力的に見えます。しかし他の購入希望者がより高い価格や、さらに好条件を提示すれば、その放棄が交渉の成功につながるとは言い切れません。

交渉の方法 3

ローン特約をつけない

ローン特約は買主が金融機関のローン審査に通らなかった場合に、契約を白紙に戻すことができる条項です。通常、不動産売買契約にはこの特約が含まれていますが、これを放棄することで、売主にとって売買契約が破綻になるリスクがなくなります。

ローン特約を放棄するというのは、売主に対して「ローン審査の結果に関係なく必ず購入する」という強い意思表示をすることになります。現金購入を前提としていない場合でも、「確実な購入の意思」を示すことで、売り手の心証を良くし交渉を有利に進められます。

他の交渉材料と組み合わせて使いやすい方法です

ローン特約を放棄する交渉の方法

売り手にとっての不安材料(契約不適合やローンの不成立)を排除することで、売り手の不安を和らげ、価格の譲歩を引き出すことが狙いです。

ローン審査に自信がある場合、「ローン特約なしで契約します」と伝えることで、売り手に取引の確実性を保証します。ローン特約をつけない代わりに、売り手に価格の譲歩を求めたり、付帯条件の改善(家具や家電の提供など)を引き出すことができます。

ローン特約を放棄する際の注意点

あらかじめローンの事前審査を通しておく

ローン特約を放棄する際は、あらかじめ金融機関の事前審査を受け、確実にローンが承認される状態にしておくことが重要です。売主に対して安心感を与えると同時に、買主自身もリスクを最小限に抑えた状態で交渉を進めることができます。

買主の財務リスクが大きくなる

ローン特約を放棄することで、買主は自己資金に依存した取引となるため、資金繰りが厳しくなる場合があります。予想外の事態やローン条件の変更に備えて、事前に資金計画を立てておく必要があります。

売主に対してリスク軽減を強調する

ローン特約を放棄する際は、「ローン審査に関係なく取引を進められるため、安心して取引を進められます」という点を強調します。

売主にとっては契約破綻のリスクがないため、確実に取引成立がすることを前面に出せば価格交渉を有利に進められます。

交渉の方法 4

売り手の動機を利用する

売却動機は売り手が不動産をどの程度早く手放したいのか、または価格交渉に応じる余地があるのかを推測するための材料になります。

  • 売却を急いでいる場合(売主が弱気):価格交渉に応じやすい
  • 金銭的・時間的に余裕がある場合売主が強気):価格交渉が難しい
売却の動機で多い順
  • 住み替え(家族構成やライフスタイルの変化)
  • 資産整理(固定資産税の支出を減らしたい)
  • 相続税の支払いや資産の分割が必要な場合

その他の動機

  • 借金返済
  • 建物の老朽化が進んでいる
  • 海外や遠方への転勤、引越し
  • 財産を分割する必要がある離婚
  • 空室率が増加したりして収益性が悪化している

回答者の属性:全国、男女不問、20代~90代

有効回答人数:5205名

【アンケート調査結果】不動産を売却した理由ランキング

売主の売却動機を知る方法

  • 直接質問する
  • 不動産業者に聞く
直接質問する

最もシンプルな方法は、売主に直接質問することです。もちろん、質問の仕方には注意が必要です。あまりにも突っ込んだ質問やプライバシーに関わる質問をすると、相手が警戒する可能性があります。

以下のような自然な質問が無難です。

  • 売却を急いでいる理由があるのですか?
  • 物件をどのくらいの期間売りに出されていますか?
  • どうしてこのタイミングで売却を考えているのですか?
不動産業者に聞く

不動産業者は売り手と直接取引をしているため、売却動機に関する情報を持っていることが多いです。売却動機を聞くタイミングは、物件の内見のときが自然です。以下のような質問をしてみると良いでしょう。

  • 売主はどのくらいの期間で売却を希望されていますか?
  • 価格交渉にどの程度柔軟な姿勢ですか?
  • 売主はどのような理由でこの物件を売却されるのですか?

不動産業者は売主の利益を守る立場でもあるため、すべての情報をオープンにしてくれるわけではありません。そのため、質問の仕方や関係構築が大切です。

交渉のポイントと切り口

どの場合でも根本的な動機は「早期に売却したい」という状況に集約されます。売主が早急に物件を手放したい理由が何であれ、その「時間的な制約」を利用して、買主側としては価格交渉を有利に進めることが可能です。

それぞれのケース(借金返済、老朽化、転勤、離婚など)には、売主が早期に売却したい理由に若干の違いはあるものの、買主側が価格交渉をする際の切り口(交渉のポイント)は基本的に同じになります。

つまり、売主の「早急に売却したいニーズ」を利用して、迅速な取引と契約不適合責任の放棄などを提案し、その対価として価格を引き下げてもらうというのが共通のアプローチです。

売却動機を利用する際の注意点

売主の立場を尊重し、信頼関係を保つ

売主の事情や動機に対して強引に交渉を進めると、相手に不快感を与え取引自体が破談になる可能性があります。

借金返済や離婚などのデリケートな理由で売却を急いでいる場合は、あまりに露骨にその状況を突いて交渉すると、売主に反感を抱かれる恐れがあります。

相手の立場を理解し、誠実で冷静な態度を心がけることが大切です。

過度な値引きを要求しない

売主が物件を早く手放したい状況であっても、市場価格や相場を無視して過度に値引きを要求すると、交渉が決裂する可能性があります。

売主が急いでいても、物件の価値を過剰に低く見積もっては、売主にとって不利すぎる取引と受け取られかねません。相手が納得できる範囲で価格交渉を進めることが重要です。

相手の焦りに依存しすぎない

売主は他の購入希望者とも交渉している場合があります。こちらの条件が強引であると感じれば、他の購入希望者に売却する可能性があります。

売主の焦りを利用するのでなく、売主にとって有利な取引条件を組み合わせることが大切です。

交渉の方法 5

物件の問題点を利用して交渉材料にする

物件に完璧な状態を求めることは難しいです。価格交渉をするときは、小さな問題点にはある程度目を瞑り、大きな修繕やリフォームが必要な箇所に焦点を当てるのが効果的です。

問題点を利用して交渉を有利に進める方法

インスペクション(物件調査)を行い、問題点を明確にする

専門家による物件調査を依頼し、物件の老朽化、構造的な問題、設備の劣化などを洗い出します。この調査結果を交渉材料として使い、売り手に提示することで値引きを要求します。

インスペクションの結果を文書化し、客観的な証拠として活用することが重要です。

修繕費用の見積もりを用意して提示する

インスペクション結果をもとに、実際にかかる修繕費用の見積もりを取得し、具体的な数字を提示します。たとえば、「この部分の修繕には100万円かかりますので、その分を価格に反映していただけませんか?」といった具合に、明確な金額を示すことで、売り手に納得させやすくなります。

現状渡しの交渉を提案する

物件の問題点を踏まえ、「現状渡し」での取引を提案することも有効です。現状渡しとは、物件の現況をそのまま引き継ぎ、修繕やリフォームを買い手が引き受ける形で売却するものです。

その代わりに値引きを要求します。売り手にとっては修繕の手間が省けるため、この条件で価格交渉が成立しやすくなります。

売り手の立場に理解を示しながら交渉する

問題点を指摘する際には、売り手に対して強引に値引きを迫るのではなく、「私たちもこの物件を気に入っていますが、修繕に少し手がかかるので、その分を考慮して価格を調整していただけませんか?」というように、相手の立場に理解を示しながら提案します。

売り手に対して誠実な姿勢を見せることで、交渉がスムーズに進みやすくなります。

問題点を交渉に利用する際の注意点

小さな問題点に対して指摘しない

小さな問題点をいちいち指摘して交渉すると、売主に「この買主は細かすぎる」と思われる可能性があります。交渉は信頼関係の上に成り立つため、細かい点ばかりを指摘すると交渉がスムーズに進まなくなり、売主が他の購入希望者に目を向けてしまうかもしれません。

完璧な不動産というものは存在しないので、ある程度のことは目を瞑るのも大切です。

問題点を誇張すると信頼を失う

物件の問題点を過度に強調したり、実際の修繕費用よりも高い金額を提示するなど、誇張した主張を行うと、売り手との信頼関係が崩れることになります。正確な情報に基づいた交渉が必要です。

誇張しすぎると、売り手が交渉に非協力的になることもあります。

本質的なことに集中する

物件の中で大きな修繕費がかかる箇所、例えば屋根の補修、基礎の構造問題、シロアリ被害などは将来的に大きな費用が発生します。

これらの問題点に焦点を当てることで、現実的な交渉となり妥当な価格引き下げが期待できます。

交渉の方法 6

エスカレーション戦略を使う

「エスカレーション戦略」は、最初に低めの価格を提示し、徐々に譲歩することで最終的に自分の希望価格や条件に近づける交渉手法です。この方法は、相手に対して少しずつ条件を譲らせることで、相手が「主導権を握っている」と錯覚させつつ、実際には自分に有利な結果を引き出すことを狙います。

エスカレーション戦略は、不動産交渉で非常に効果的ですが、慎重に使わないと逆効果になることがあります。

エスカレーション戦略の流れ

STEP
低めのオファーからスタート

買い手として、まずは相場よりも少し低めの価格を提示します。この段階では、売り手に「まだ交渉の余地がある」と感じさせることが目的です。

例:3,000万円の物件に対して、まずは2,500万円でオファーする。

STEP
段階的に譲歩していく

最初のオファーを受け入れられない場合、少しずつ譲歩しながら価格を上げます。この時、徐々に価格を上げていくことで、売り手には「自分が交渉をリードしている」と感じてもらうのがポイントです。

例:最初に2,500万円のオファーを出し、相手が断ったら2,600万円に引き上げる。

STEP
売り手に譲歩させる

譲歩を小出しにすることで、売り手も「もう少し下げてもいい」と思い、価格を譲歩し始めます。売り手も少しずつ妥協してくると、交渉が進みやすくなります。

例:売り手が「2,800万円までなら下げられる」と譲歩してきた場合、さらに少しずつ価格を交渉して2,700万円を目指す。

STEP
最終的に希望価格に近づける

最終段階で売り手が譲歩を続け、買い手としても自分の譲歩幅が限界に近づいたところで、最終的な希望価格を提示します。売り手も何度か譲歩しているため、このタイミングで価格が落ち着くことが期待されます。

例:最終的に、買い手が2,750万円でオファーし、売り手が2,780万円で折り合う。

ポイントは、「少しずつ譲歩しながら、売り手に自分が主導権を持っているかのように感じさせること」です。

最初から高いオファー(2,850万円~2,900万円)を出すのではなく、段階的に交渉を進めることで、最終的に自分の希望に近い条件(およそ2,700万円辺り)での取引を目指します。

エスカレーション戦略のメリット

交渉の幅を広げられる

最初に低めのオファーを出すことで、交渉の幅が広がります。交渉相手(売り手)は最初のオファーを起点として、どこまで譲歩するかを考えるため、最終的に妥協できる価格や条件の余地が広くなります。

相手に「交渉の主導権を持っている」と錯覚させられる

エスカレーション戦略の大きなメリットは、売り手が「譲歩しているのは自分だ」と感じることです。実際には買い手も譲歩しているものの、最初に低めの価格を提示しているため、売り手は交渉がうまくいっていると感じます。

この感覚があると、売り手はさらに譲歩しやすくなります。

価格交渉の「天井」を引き出せる

最初に低めの価格を提示し、その後少しずつ譲歩することで、売り手が提示している「最終的な希望価格」や「限界価格」を引き出しやすくなります。

交渉が進むにつれて、売り手が譲歩できる限界が見えてくるため、それをもとに自分の最終条件を調整できます。

エスカレーション戦略の注意点

最初のオファーが低すぎると交渉が破綻する

最初に提示する価格があまりにも低すぎる場合、売り手が交渉に対して不快感を持ち、取引そのものを拒否する場合があります。

例えば、相手が投資家だったり、強気な姿勢を持っている売主の場合、この戦略が裏目に出るので、最初のオファーを慎重に決めることが重要です。

極端なオファーをしない

最初に低すぎるオファーを提示すると、売り手が「この買い手は真剣ではない」「こちらを尊重していない」と感じてしまうことがあります。

このように感じられると、交渉がうまく進まないばかりか、他の買い手と交渉を進めることもあり得ます。

交渉が長引く

エスカレーション戦略は交渉を段階的に進めていくため、取引が長期化することがあります。相手が売り急いでいる場合、この戦略は逆効果です。

エスカレーション戦略の核心は最初の提示価格です。価格から5%~15%引きが妥当とされています。

最初の価格が低すぎると相手を不快にさせ、逆に高すぎると譲歩の余地がなくなるため、バランスを見極めることが重要です。

交渉の方法 7

相場と比較対象(コンプ)を活用する

これは、近隣エリアで最近売買された類似物件(コンパラブル、通称コンプ)を調べ、物件が適正価格よりも高いかどうかを判断します。

価格交渉を始める前に、売り手が提示する価格とコンプの間にギャップがある場合、その差を根拠として値下げを要求します。具体的なデータを提示することで、交渉に説得力が生まれます。

この方法は自分自身が不動産の目利きができないと交渉に使えません。不動産の相場を理解し、目利きを養う方法は以下の記事で紹介しています。

物件の価格を毎日追う

比較対象(コンプ)を使って交渉する方法

近隣の類似物件のデータを集める集める

周辺エリアの同じような物件の最近の取引価格を調べることで、その物件が適正価格かどうかを判断できます。物件の規模、築年数、立地、設備の状況が似た物件の販売価格や取引履歴を調べます。

このデータをもとに、売主に「近隣の類似物件が〇〇万円で取引されています。これを考慮して、価格を〇〇万円に調整していただけませんか?」といった形で交渉を進めます。

同時進行で他の物件も検討していることを伝える

他の物件を同時に検討していることを伝えるのも有効です。

「現在、他の物件も同じ条件で検討していますが、こちらの物件が予算内に収まれば、すぐに契約したいと考えています」といった形で、売主に「価格を下げれば早期に取引が成立する」という圧力をかけることができます。

交渉の際には、売主に対して強引に価格を下げるよう求めるのではなく、信頼関係を大切にしながら、データをもとに冷静に交渉を進めることが重要です。

この物件を気に入っていますが、市場価格に合わせた調整をお願いできればすぐに取引を進められます」といった形で誠実に交渉を行うことで、有利な条件で取引を進めることができます。

比較対象(コンプ)を利用する際の注意点

相場通りの価格なら交渉の余地がない

近隣物件と比較して相場に近い場合、交渉の余地はほとんどありません。売主も「わずかな差だから値引きの必要はない」と感じ、価格調整に応じない可能性があります。

データが最新でないと説得力がない

古いデータをもとに交渉を行うと、売主に「今の相場とは違う」と言われます。比較対象物件のデータは最新のものが必要です。

市場が急騰している場合には逆効果

市場が上昇トレンドにある場合、近隣物件の取引価格を持ち出しても、「市場が伸びているため、今は高値で売れる時期だ」と売主が逆に強気になる可能性があります。

こうした場合、データを利用した交渉がかえって不利に働くことがあるため、タイミングの見極めが重要です。

価格交渉の進め方は売主の属性で変わる

物件の売主が不動産を扱うプロ(投資家)と、相場に詳しくない一般人とでは交渉の難易度や進め方が大きく変わります。

交渉戦略投資家一般の売主
契約不適合責任を放棄する効果的効果的
ローン特約をつけない効果的効果的
売り手の動機を利用するどちらとも言えない効果的
問題点を利用して交渉材料にする効果的効果的
エスカレーション戦略効果なし効果的
比較対象(コンプ)どちらとも言えないどちらとも言えない
売主が弱気になった時効果なし効果的

売主が投資家の場合の交渉方法

投資家が売主の場合は、データに基づいた交渉と「すぐに購入する」提案が有効です。感情的なアプローチは効きにくいため、論理的に交渉する必要があります。

投資家の取引の特徴

  • 相場に詳しいため、価格に関する交渉はシビアで厳しい。
  • 物件に対して特別な思い入れがなく、利益にもとづいた判断をする。
  • 大きなリターンを得ることを目的としているため、譲歩は期待できない
  • 交渉術や価格設定のポイントを熟知しているため、不利なオファーには簡単には乗らない

投資家と交渉する際のポイント

データに基づいた交渉が必須

単なる「安くしてください」という交渉は通用しません。

近隣の類似物件(コンプ)の価格、物件のキャッシュフローなど、データを活用して合理的な根拠を示すことが必要です。

投資家は感情ではなく数字で判断するため、修繕にかかるコストなどを提示することで交渉の余地が生まれる場合もあります。

付加価値を提案する

価格交渉が難しい場合、価格以外の条件で取引を有利に持っていく方法もあります。

たとえば契約時の諸条件(ローン特約を付けない、契約不適合責任を放棄する)などで、価格以外の部分で投資家に有利な提案を行い、譲歩を引き出すことが挙げられます。

価格交渉は控えめに

投資家は不動産の価格の上昇や下落、需要と供給のバランスを熟知しています。、価格交渉を強引に進めると、すぐに別の買い手に切り替えられる可能性があります。

価格交渉は控えめにしつつ、付帯条件の交渉に重きを置くことが賢明です。

売主が一般人の場合の交渉方法

相場に詳しくない一般人が売主の場合は、感情的な配慮と、物件の相場や修繕にかかる費用を丁寧に説明することで、価格交渉が成功しやすくなります。感情に訴えるアプローチが効果的です。

一般人の取引の特徴

  • 相場に詳しくないため、価格設定が相場とズレている。
  • 不動産取引に慣れていないため、交渉の経験が少なく、交渉に対する抵抗感を持っている。
  • 感情的な価値が強く「自分の家はもっと価値がある」と感じ、値引き交渉に応じにくい。

一般人と交渉する際のポイント

感情に配慮した交渉を心がける

一般の売主は家に対する思い入れが強いので、いきなり低い価格を提示してしまうと不快感を抱き、交渉が難しくなることがあります。

嫌われたらその時点で終わりなので、誠実で丁寧なコミュニケーションが重要です。

例えば、「素晴らしい物件だと思いますが、少し予算オーバーしているので、このくらいの価格にしていただけると助かります」といった、相手を尊重しつつ自分の立場を理解してもらうアプローチが効果的です。

物件の問題点を交渉材料に使う

物件に修繕が必要な箇所や老朽化が見られる場合、それを指摘し、修繕費を価格に反映させる交渉が可能です。

一般の売主は、物件の価値を過大評価していることも多いため、冷静に修繕や改装にかかるコストを提示することで、説得力のある交渉ができます。

感情に訴える

相場を知らない一般の売主の場合、感情が交渉に大きく影響します。「大事に住むので、この価格にしてもらえませんか?」といった、感情に訴える交渉が有効です。

住み慣れた家を手放す売主に対して、物件を大切にしてくれる買い手という印象を与えることで、価格面で譲歩を引き出すことができます。

一般の売主に対して交渉する際は、誠実さを示しつつ「物件を購入したい強い意欲」を伝えることが重要です。無理な要求ではなく、柔らかく譲歩を求めることで売主の心に響き交渉がスムーズに進みます。

以下に、実際に使えるセリフを紹介します。長く住んでいた家の場合はリフォーム費用がかかることが多いので、その点を踏まえて交渉すると効果的です。

リフォーム費用を強調する

「この物件を本当に気に入っていて、どうしても購入したいのですが、リフォームにかなりの費用がかかる見込みです。もう少しだけ価格を調整していただけないでしょうか?」

リフォーム後の価値を強調する

「この物件を手に入れて、自分たちの理想に近づけるためにリフォームを考えています。ですが、その費用を考えると、少しだけ予算を超えてしまいそうなので、もう少し価格を下げていただけると助かります。」

誠実に買いたい気持ちを伝える

「この家で新しい生活を始めたいと強く思っているのですが、リフォーム費用がどうしても予算を圧迫しています。すぐに契約を進めたいので、その分を考慮して価格を少し調整していただけると、とても助かります。」

具体的なリフォーム費用を提示する

「屋根の補修や内装のリフォームにかかる見積もりを出してみたのですが、大体○○万円ほどの費用がかかるとわかりました。ですので、その分を少し価格に反映していただけると嬉しいです。」

買いたい意思と譲歩を引き出す

「この物件が本当に気に入っているので、ぜひ購入したいです。ただ、リフォームにかかる費用も考慮すると少し予算オーバーしてしまいます。少しだけ価格を調整していただければ、すぐにでも契約に進みたいと思います。」

価格交渉が有効なタイミング

  • 買付申込書を提出するとき
  • 売主が最初に価格を下げた直後
  • インスペクション(物件調査)の結果が出た後
  • 売り出されてから3ヶ月後

タイミング 1

買付申込書を提出するとき

買付申込書は、購入希望者が「あなたの家を買いたい」という意思を売主に伝えるものです。この段階で買主が提示する指値は、売主が真剣に価格を見直すきっかけとなるタイミングです。

売主にとっては、実際のオファーが目の前に提示されることで、「この価格(購入希望者からの指値)で売れる可能性がある」と認識し、自分の希望する売却価格と照らし合わせて価格を再検討する機会になります。

使える交渉術

交渉戦術効果
比較対象(コンプ)
売り手の動機を使う
物件の問題点を利用する
エスカレーション戦略
ローン特約を付けない
契約不適合責任を放棄する
売主が弱気になった時

タイミング 2

売主が最初に価格を下げた直後

価格を下げた背景には、売主が「この価格のままでは物件が売れない」と判断したからです。問い合わせが少なく、当初の希望価格では買い手が現れないと感じ、売主が弱気になっている状況です。

すでに価格を下げたことで、売主はさらなる譲歩にも応じやすく、買い手側が有利な条件を引き出せる可能性が高いといえます。

使える交渉術

交渉戦術効果
比較対象(コンプ)
売り手の動機を使う
物件の問題点を利用する
エスカレーション戦略
ローン特約を付けない
契約不適合責任を放棄する
売主が弱気になった時

タイミング 3

インスペクション(物件調査)の結果が出た後

インスペクションによって物件に欠陥や修繕が必要な箇所が見つかる場合があります。このような場合、修繕にかかる費用や今後のリスクを理由に価格の交渉を進めることができます。

売主としても、インスペクションの結果が事実である限り、それを無視して売却を進めるのは難しくなるため、価格の見直しに応じやすくなります。

使える交渉術

交渉戦術効果
比較対象(コンプ)
売り手の動機を使う
物件の問題点を利用する
エスカレーション戦略
ローン特約を付けない
契約不適合責任を放棄する
売主が弱気になった時

タイミング 4

売り出されてから3ヶ月後

売り出しから3カ月という期間は、売主と不動産会社が締結している媒介契約の契約期間の更新時期になります。媒介契約とは、不動産会社が売主と契約を締結し、売買の成立に向けて業務内容を規定する契約です。

媒介契約の最長期間は3カ月とされており、その期間内に売却が成立しない場合、不動産会社は契約を更新する必要があります。この際、売出価格や売却の目標時期に応じて、売却が難航している場合や問い合わせが少ない場合、媒介契約の更新が行われないこともあります。

そのため、不動産会社も契約成立に向けてより積極的に動き、価格交渉や売主の説得に力を入れることが期待できます。

使える交渉術

交渉戦術効果
比較対象(コンプ)
売り手の動機を使う
物件の問題点を利用する
エスカレーション戦略
ローン特約を付けない
契約不適合責任を放棄する
売主が弱気になった時

仲介役の不動産業者と良好な関係を持つ

不動産取引で価格交渉を成功させるためには、仲介業者との信頼関係を築くことが重要です。仲介業者は、売主と買主の間に立って交渉を進めていく役割があります。

両者の立場を理解しながら、取引をスムーズに進めるため、仲介業者と良好な関係を保つことで、買主が有利な条件を引き出しやすくなります。

仲介業者との良好な関係が交渉に有利になる理由

売主の情報を得やすくなる

仲介業者と良好な関係を築くことで、売主がどの程度価格交渉に応じる余地があるのか、売却する理由は何なのか、どんな条件にこだわっているかなど、交渉を有利に進めるための情報を得られます。

こちらの意図を売主にうまく伝えてくれる

仲介業者はこちらの希望や立場を売主に対してうまく伝えてくれることがあります。

たとえば、こちらの予算や事情を考慮した上で、売主に対して「この価格で取引を成立させる理由」を説得力を持って説明してくれます。仲介業者のサポートによって、売主が価格交渉に応じる可能性が高くなります。

交渉を円滑に進めてくれる

仲介業者は不動産交渉のプロです。多くの取引を経験しており、どのようなアプローチが有効かを熟知しています。

仲介業者が味方になってくれれば、売主が譲歩しやすくなるような提案も引き出してくれます。

不動産業者にとって「良い客」になる

「良い客」とは?
  • 豊富な資金を持っている客
  • 仲介業者の利益に配慮できる客
  • リスペクトを持って接してくれる客
  • 良い物件を紹介したらすぐに購入する客
  • 「買う!買わない!」の決断がはっきりしている客

不動産業者にとって「良い客」とは、単に高額な物件を購入する人ではなく、取引をスムーズに進めるために協力的で信頼できる客です。優遇されやすい、つまり業者が「サポートしたくなる」客になるためには、いくつかの重要なポイントがあります。

良い物件を紹介したらすぐに購入する客

紹介した物件をすぐに購入する客は、仲介業者にとってリスクが少ない優良な顧客です。こうした客には、良い物件を誰よりも優先的に紹介し、確実に契約を進めようとします。

仲介業者の利益に配慮できる客

不動産業者は、仲介手数料で利益を得ています。この手数料は法律で定められた範囲内であり、手数料を値切る客はまともに相手にされなくなるので要注意です。

「買う」「買わない」の決断がはっきりしている客

「買わない」と早く決断してくれれば、不動産業者はその客にかけるリソースを削減し、購入意欲のある見込み客に集中できます。

曖昧な返事をする客に対しては、無駄な時間と労力を使ってしまい、他の取引を逃すため業者にとっては迷惑になります。

豊富な資金を持っている客

資金に余裕がある客は、ローン審査や融資の問題を気にせずに取引できるので、不動産業者は安心して物件を紹介できます。

高額物件ほど仲介手数料も増えるため、業者にとってはメリットが大きいです。

リスペクトを持って接してくれる客

リスペクトを持って接してくれる客に、不動産業者は「この人のために尽力したい」という気持ちになり、より良い物件を紹介してくれます。

逆に無礼や横柄な態度を取る客には業者も距離を置き、いろいろ後回しにされることがあります。

やってはいけない交渉方法

  • 過度な値引き交渉
  • 一方的な条件提示
  • 物件の欠点を過度に指摘する

過度な値引き交渉

不動産の価格交渉で価格の20〜30%といった大幅な値引きを要求することはマナー違反とされています。最大でも物件価格の15%以内の値引き幅が相場とされているので、それを超える交渉は避けた方が無難です。

内見に来た時点で価格にはある程度納得していると見なされるため、50〜100万円程度の端数調整が妥当な交渉範囲です。

一方的な条件提示

買主の都合だけを考えた一方的な条件提示はやってはいけない交渉です。売主との良好な関係を築くためには、双方の事情を考慮した姿勢が大切です。

値引きに応じる代わりに引き渡し日の調整や備品の追加など、売主にとってもメリットのある提案を検討することが効果的です。

物件の欠点を過度に指摘する

内見時に気づいた物件の欠点を過度に指摘し、それを理由に大幅な値引きを要求することはおすすめできません。重要な情報は事前に開示されており、内見はそれを確認する場です。

物件の状態について疑問がある場合は、不動産会社を通じて丁寧に確認し、必要に応じて専門家の意見を求めるなど、建設的なアプローチが望ましいです。

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